少し前、NHKの朝のラジオで作家の高橋源一郎さんが吉野源三郎さんの「君たちはどう生きるか」を紹介されていて面白そうなので買ってみました。
アニメ監督の宮崎駿さんもこの題で作品を作る気になったみたいですね。
主人公の「コペル君」というのになんとなく心当たりがあって「なんか聞いたことあるような・・・」と思いながら読み始めたら、やっぱり一度読んでる。
しかも、高校ではなく小学生か中学生の頃だと思います。
立派な人物になろうと思えば立派な考えが必要とか、けっこう裕福な連中ばかりの中学校になぜか紛れ込んでいる豆腐屋のせがれとか、上級生にびくびくするくだりとか若いくせにジジイのような「おじさん」とかけっこう覚えているもんだ。
あの頃は今と違い頭の調子も凄く良くて「物覚え!」が激しかったからなあ・・・。
初めて出版されたのが1935年頃と言うとても古い本なんですがモダンというか読んでいる限りは全然古さを感じません。
この本で面白いのはコペル君と、その爺むさいおじさんのやりとりより「昭和初期」の風俗というか生活感です。
主人公の「コペル君」は銀行の重役だった父親が亡くなってしまい、市内から郊外の「小さな家」に住んでいるんだけど、おそらく働いていないお母さんと「ばあや」さらに「女中」の4人暮らし。
(文豪と呼ばれる人たちとか獅子文六の小説なんかでも書かれているけど、この頃はちょっと裕福な家にはたいてい「書生」とか「女中」さんがいたらしい。家の中に他人がいるというのはどういう感じなんだろう。)
しかもその「小さな家」も庭もありそこそこ大きい。
それでも全然お金に困っている様子は無くむしろ余裕がある様子です。
この辺で貧乏人の豆腐屋のせがれとひとからみあります。
今だと、たとえ父親が銀行の重役でも亡くなってしまったらこういう暮らしは無理なんじゃないかなあ。
また友達もとんでもないお金持ちなんだけど、このあたりの描き方が最近の「格差云々」ではなくて、それはそれで当然というスタンスで面白い。
まあ、高校生の頃はこういう話を今も温泉に行ってる友人たちと熱く語ったものですが、あの頃はお酒を飲まなくても酔っぱらっていたような日々でしたからねえ。
まあ、立派に生きようとは思います。
という訳で誰が読んで面白い本だと思います。
ただ、値段を見ずに買ったらそんなに厚くないのに1,000円くらいと意外に高くびっくりしました。